芽が出たあと、
目に見えるものは、上へ伸びていく。
光を求めて、
空へ向かって。
けれど——
その下では、
もっと静かに、
もっと広く、
別の動きが続いている。
根は、下へ伸びる。
暗く、
湿った、
何も見えない場所へ。
なぜ、
上ではなく、
下へ向かうのか。
なぜ、
誰にも見えないところへ、
力を使うのか。
根は、
奪わない。
土の中で、
水と、
養分と、
微かなつながりを受け取りながら、
同時に、
何かを渡している。
見えない交換が、
続いている。
誰にも気づかれないまま。
上に現れるすべては、
ここで支えられている。
風に揺れる葉も、
やがて咲く花も、
その根の広がりの分だけ、
存在している。
見えないものが、
見えるものをつくっている。
土の中には、
静かな広がりがある。
そこには、
競争ではなく、
つながりがある。
押し上げる力ではなく、
支える力がある。
誰にも見えないところで、
すべては、
すでに始まっている。

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