冬のあいだ、
畑は静かだった。
風は冷たく、
空は硬く、
命の気配は
土の下に沈んでいた。
けれど
止まっていたわけじゃない。
土の中では
ずっと呼吸が続いていた。
見えないだけで、
眠っているだけで、
命は
次の季節を待っていた。
今朝、畑に立つと
その呼吸が少し変わっていた。
光の中に
小さな虫が舞っている。
ほんの小さな粒のような命。
それでも確かに
冬の終わりを知らせている。
ソラマメの葉が
少しだけ厚くなり、
えんどうのツルが
空を探すように巻き始めている。
誰かが合図を出したわけでもないのに
すべてが同じ方向に動き出す。
それが
季節というものなのだろう。
人はときどき
冬を止まった時間だと思う。
でも
そうじゃない。
見えない場所で
ずっと準備が続いている。
土の中で
命が目を覚ますように、
人の中でも
何かが静かに動き始める。
それは
音のない変化。
けれど
確かな変化。
今日の二十四節気は
啓蟄。
土の中で眠っていた命が
そっと地上へ向かう日。
そして今日、
光の中で小さな虫が舞っていた。
ほんの小さな命。
けれど確かに、
季節が動き出したことを知らせている。
見えない場所で続いていた命が、
今日、光に触れる。

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