― 過去と未来がぶつかる場所 ―
「今ここに集中すれば幸せになれる」
そんな言葉を、
一度は聞いたことがあると思う。
でも正直、
どこか胡散臭くも感じていた。
過去を考えるな。
未来を心配するな。
今にいろ。
それができたら、
誰も苦労しない。
そもそも「今」とは何なのか。
時間の一点だろうか。
一瞬の切れ目だろうか。
人は、
実は「今」を直接見ていない。
目に映る景色は
ほんの少し前のものだ。
音も、触覚も、
すべては脳の中で編集されている。
つまり、
私たちが感じている「今」は、
すでに少し過去だ。
では「今ここ」は幻想なのか。
違う。
むしろ逆だ。
今ここは、
過去と未来が
真正面からぶつかっている場所だ。
人は生きている限り、
必ず二つのものを抱えている。
- 記憶(過去)
- 予測(未来)
後悔や反省は、過去から来る。
不安や心配は、未来から来る。
その二つが
同時に流れ込んでくる地点。
そこが
「今ここ」。
だから、
今ここは静止していない。
常に揺れている。
常に更新されている。
集中しているとき、
時間が短く感じられることがある。
逆に、
恐怖や痛みの中では、
時間が引き伸ばされる。
時間は一定ではない。
今ここには、厚みがある。
ここで、
「幸せ」との関係が見えてくる。
後悔は、過去にしかない。
不安は、未来にしかない。
この二つは、
幸せの反対側にある感覚だ。
だから
過去や未来に引きずられている間、
人は「今ここ」にいない。
でも、
過去を消す必要はない。
未来を考えなくていいわけでもない。
大事なのは、
どこに立って、それらを使うかだ。
今ここに立ったまま、
過去を材料として使う。
今ここに立ったまま、
未来を想像する。
これができたとき、
後悔も不安も、
形を変える。
後悔は
自分を責める刃ではなく、
次の一歩のヒントになる。
不安は
自分を縛る影ではなく、
慎重さという知恵になる。
「今ここにいる」とは、
何も考えないことじゃない。
感じないことでもない。
今ここにいるとは、
過去にも未来にも引きずられず、
選択だけをここで行うこと。
だから言える。
幸せとは、
特別な状態じゃない。
悟りでも、
達観でもない。
幸せとは、
今ここに戻ってこられる回数のことだ。
迷ってもいい。
揺れてもいい。
何度でも
今ここを失い、
何度でも
取り戻せばいい。
この場所に立てたとき、
次の問いが自然に立ち上がる。
「では、
私は本当に自由に選んでいるのだろうか?」
次回につづく。
第3回「自由意志」へ。

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