ハルイチへ|12回目の春

3月25日。
ハルイチ、12歳の誕生日おめでとう。

まだ冷たい風の中に、
ふっと春の気配が混じる季節に、
君はまた一つ、歳を重ねた。


ハルイチへ。

この文章を、君がいつ読むのかはわからない。
ただ、今この空気を残しておきたくて書いている。


3月の終わり。

朝はまだ少し寒く、
吐く息がわずかに白い。

それでも昼には、
やわらかな光が差し込んでくる。


冬と春のあいだ。

どちらでもないようで、
確かに何かが動き始めている季節。


ハルイチは今、
その中に立っている。


小学生が終わり、
春からは中学生になる。

たったそれだけのことのようで、
そこには12年という時間がある。


月に数度会うたびに、
「また大きくなったな」と思う。

この頃特有の、あの伸び方。


その代わりに、
少しずつ言葉が減ってきたね。

言葉は、少しだけ奥へ。


プラレール、戦隊モノ、LEGO、ゲーム。
欲しいものをまっすぐ教えてくれていた頃。


今年は、
「何もない」と言う。


たぶん本当は、
別のものを思っているのだろう。

でも、それは口にしない。


その距離が、
少しだけ大人で、
少しだけ寂しくて、
そして、少し誇らしい。


成長とは、

こういうものなのかもしれない。


人は「育てる」と言うけれど、
ほんの少し違う気もする。


成長は、

つくられるものではない。

時間が、

静かに運んでくるものだ。


干し柿も、味噌も、塩も。

人の手はわずかで、
あとは時間と自然が仕上げていく。


人も、きっと同じだ。


気づいたら、背が伸びていて。
気づいたら、言葉が減っていて。
気づいたら、少し遠くを見ている。


それが、12年。


うまくいく日も、
いかない日もあるだろう。

それでいい。


大事なのは、結果ではなく、
どう在ろうとしたか。


そして——


誕生日というのは、
その日だけが特別なのではない。


ここまで続いてきた日々と、
これから続いていく日々の、
ひとつの印。


ハルイチ。


君が生まれた日が特別なのではなく、
君が生き続けていることそのものが、

特別なんだ。


12歳、おめでとう。

また来週、
少し大きくなったハルイチに会えるのを

楽しみにしている。


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