ワールドカップログ⚽️|第14話

フランスへ。強さにも、季節がある。

フランスらしくないまま、
試合が終わった。

押し込まれても慌てず、
どこかで流れを引き寄せ、
最後には自分たちの結末へ持っていく。

そんなフランスを、
僕らは何度も見てきた。

けれど、この夜は違った。

試合の温度も、
スタジアムの視線も、
最後までスペインの側にあった。

エンバペの姿には、
これまで背負ってきた時間の重さが見えた。

国の期待を引き受け、
勝たせる側に立ち続けてきた時間。

その向こうでは、
ヤマルがまだ何も背負っていないような軽さで、
大舞台を駆けていた。

若さには、
二つの顔がある。

舞台に呑まれる若さと、
怖いものを知らず、
舞台の方を自分のものにしてしまう若さ。

この日のヤマルは、
後者だった。

ボールを持つたびに、
何かが起きる気配がした。

少し止まり、
相手を誘い、
動いた瞬間だけ、その先へ行く。

その姿には、
若い頃のネイマールを見ていた時のような、
華やかさと危うさがあった。

そして同時に、
これから始まる者だけが持つ、
軽さがあった。

ロナウドが去り、
エンバペが立ち止まり、
その横を次の世代が走り抜けていく。

世代交代は、
誰かが終わったと告げることではない。

スタジアムの視線が、
少しずつ別の光へ移っていくことなのだと思う。

フランスは、
弱くなったのではない。

エンバペが、
終わったわけでもない。

ただ、
強さにも季節がある。

咲き続ける花はなく、
吹き続ける風もない。

それでも、
季節が変わったあとにしか見えない景色がある。

この夜、
ピッチには確かに、
次の季節の風が吹いていた。

世代交代は、音ではなく、風でわかる。

フランスへ。

敗北の中で初めて見える景色も、
きっとある。

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