レオン|その時が来たら


好きな歌をきっかけに、

未来に渡す約束が生まれた。

まだ理解できないものは、

無理に説明しなくていい。

その時が来たら、ただ一緒に観ればいい。


「おじちゃん、好きな歌ある?」

ちひろが、何気なく聞いてきた。

少し考えて、答えた。

「…スティングの“Shape of My Heart”かな。」

「どんな歌?」

そう聞かれるかと思ったけど、
ちひろはただ「ふーん」と頷いただけだった。


「レオンって映画があってな。」

少しだけ続けた。

「その最後に流れる曲なんや。」


ちひろはまだ、何も知らない。

愛とか、孤独とか、
命の使い方とか。


「ちひろがもう少し大きくなったら、
一緒に観ようぜ。」

「うん。」

その返事は、軽かった。

でも、それでいいと思った。


レオンという男は、
誰も信じなかった。

誰も受け入れなかった。

関わらないことで、
自分を守っていた。


でも、一人の少女と出会った。

その時間の中で、
少しずつ変わっていった。


愛されたからじゃない。

愛したから、変わった。


レオンは最後、自分の命を使った。

それは、突然の出来事じゃない。

一緒に過ごした時間の中で、
少しずつ決まっていったものだった。


あの映画を観る日が来たら、
たぶん何も説明しないと思う。

ただ、隣で一緒に観る。

それだけでいい。


そのとき、
ちひろが何を感じるかはわからない。

でも、少なくとも一つだけは伝わると思う。


人は、どう生きるかで、
最後の選択が決まる。


その時が来たら、一緒に観よう。

それまでに、
どんな背中を見せられるか。

静かに、準備しておこうと思う。


守るとは、囲うことじゃない。
生き方を渡すことだ。


レオンという生き方


レオンは、孤独を完成させた男だった。

誰も信じない。
誰も入れない。

それが、生き延びるための最適解だった。


そこに、少女が入ってきた。

拒むこともできたはずのドアを、
開けた。

その一瞬で、すべてが変わった。


愛されたからではない。

愛したから、変わった。


この違いは大きい。

愛されることは受動。
愛することは能動。


レオンは最後、自分の命を使った。

犠牲ではない。

選択だ。


その選択は、
最後の一瞬に生まれたものじゃない。

それまでの時間すべての、延長だった。


命は、捧げるものじゃない。

選んで使うものだ。


そして、その使い方は
日々の積み重ねの中でしか決まらない。


特別な瞬間が人をつくるのではない。

どう生きてきたかが、
最後の選択を決める。


それが、レオンという男だった。

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