冷えは、去り、
土が、ゆるんだ。
ためらいなく、
双葉がひらいた。
霜が降りなくなったことを、
昔の人は、
温度計で知ったわけではない。
朝、外に出たときの、
空気のやわらかさ。
土に触れたときの、
冷たさの抜け方。
そのわずかな変化の中で、
「ああ、もう大丈夫だ」
と感じていた。
苗が出るのは、
自然の都合ではなく、
人の感覚と、
ぴたりと重なる瞬間だったのかもしれない。
だからこそ、
「霜が止み、苗が出る」
という順番で、
言葉が残っている。
自然を見ているようでいて、
実は、
自分の中の感覚を、
確かめていたのかもしれない。

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