一滴💧|七十二侯|霜止出苗(しもやみてなえいづる)

冷えは、去り、

土が、ゆるんだ。

ためらいなく、

双葉がひらいた。


霜が降りなくなったことを、

昔の人は、
温度計で知ったわけではない。

朝、外に出たときの、
空気のやわらかさ。

土に触れたときの、
冷たさの抜け方。

そのわずかな変化の中で、

「ああ、もう大丈夫だ」

と感じていた。

苗が出るのは、
自然の都合ではなく、

人の感覚と、
ぴたりと重なる瞬間だったのかもしれない。

だからこそ、

「霜が止み、苗が出る」

という順番で、
言葉が残っている。

自然を見ているようでいて、

実は、

自分の中の感覚を、
確かめていたのかもしれない。

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