一滴💧|虹始見(にじはじめてあらわる)

雨が去ったあと、

空は、少しだけ軽くなる。

濡れた地面の匂いと、
やわらいだ光が混ざり合い、

景色の輪郭が、
ゆっくりとほどけていく。

そのとき、

気づくか、気づかないかのあいだに、

空に、
色が浮かぶ。

誰かに教えられるものではなく、
見ようとしなければ、
そのまま通り過ぎてしまうような、

ほんの一瞬の出来事。

それでも、

確かにそこにあったと感じるのは、

この季節の重なりの中に、
身を置いているからかもしれない。

芽吹きがあり、
命が動き出し、
花が開き、
空が鳴り、

そして、
そのすべてが一度ほどけたあとに、

光は、
色を帯びる。

七十二候は、

出来事を記録しているのではなく、

そのとき、
人が何を感じていたのかを、

静かに残している。

目に見えるものだけではなく、
見えそうで見えないものに、
心を向けていたということ。

その繊細さが、
この短い言葉の中に宿っている。

豊かさとは、

多くを持つことではなく、

こうした一瞬に、
気づけることなのかもしれない。

空に浮かんだその色は、

すぐに消えていく。

けれど、

見たという感覚だけは、

静かに、
残っていく。

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