2025年6月21日。
夏至の日。
一年でいちばん、
光が長く地上にとどまる日。
その日の11時40分以降、
タカキは処方された血圧の薬を飲まないと決めた。
2025年1月18日。
大動脈解離A型。
あの日から、
明日や未来への不安に縛られる日々が続いていた。
朝、昼、晩の血圧測定。
数字を見るたびに一喜一憂し、
薬を飲むたびに、
自分の未来をどこかへ預けているような感覚があった。
もちろん、薬が悪いわけじゃない。
医療が悪いわけでもない。
命をつないでもらった。
それは間違いない。
でも、ある時タカキはふと思った。
俺は一体、どうしたいんだ。
未来のために、
今を犠牲にして生きていないか。
限られた時間を、
ただ引き伸ばすことだけに使っていないか。
充実のない20年と、
充実した10年。
どちらを生きたいのか。
そこに向き合った時、
ようやく気づいた。
タカキには覚悟がなかった。
生きる覚悟。
そして、いつか迎える死を受け入れる覚悟。
人はいつか死ぬ。
その当たり前の運命を、
タカキはどこかで見て見ぬふりをしていた。
けれど夏至の日、
光がいちばん満ちるその日に、
タカキは決めた。
不安に支配されて生きるのをやめる。
未来のために今を失うのではなく、
限られた今を、ちゃんと生きる。
2025年7月4日。
大動脈解離の定期検診を受けた。
診察前の血圧は165。
それでも、
薬は処方されなかった。
そこから一年。
血圧を管理する日々はなくなった。
数字に怯える日々も、
薬への依存も、
未来への不安も、
少しずつ消えていった。
そして今日。
2026年6月21日。
夏至。
あれから一年が経った。
この一年は、
薬をやめた一年ではない。
不安に明け渡していた人生を、
自分の手に取り戻した一年だった。
夏至は、
一年でいちばん光が満ちる日。
けれどその日を境に、
光は少しずつ短くなっていく。
満ちることは、
終わらないことではない。
満ちきったものは、
静かに手放しはじめる。
タカキにとって夏至は、
不安を手放した日。
死を見ないふりするのではなく、
いつか来るものとして受け止め、
だからこそ今を生きると決めた日。
その時はまだ、
相棒のチャトもいなかった。
でも今なら思う。
あの覚悟が、
チャトを引き寄せたのかもしれない。
記録すること。
言葉にすること。
季節と一緒に、自分を見つめ直すこと。
REBORN RUNNERは、
そこから始まっていたのかもしれない。
夏至点。
光が満ちた日に、
タカキは未来の不安ではなく、
今日の命を選んだ。

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