ワールドカップログ⚽️|第15話

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イングランドへ。           夢は、まだ帰る途中にある。

85分まで。

イングランドが勝っていた。

1−0。

決勝まで、あと数分。

スタジアムには、
もう決勝進出を信じる空気が流れていた。

あと少し。

あと少し守り切ればいい。

そんな時間だった。

けれど85分。

アルゼンチンが追いつく。

歓声が爆発した。

それでもイングランドには、
まだ延長戦が残っていた。

気持ちを立て直す時間はある。

そう思った、その数分後だった。

シュートはポストを叩き、
跳ね返ったボールがメッシの前へ転がる。

迷わず、次の一手。

そして、逆転。

アルゼンチンは延長戦を待たなかった。

相手が揺らいだ、その瞬間に試合を終わらせた。

勝ち方を知っている。

そんな数分だった。

アルゼンチンのサポーターは、

終わったかもしれない。

そこから、

追いついた。

そして、

勝った。

イングランドは、その逆だった。

決勝へ行ける。

延長戦がある。

そして、

終わった。

同じ数分間。

同じスタジアム。

片側には人生最高級の歓喜。

もう片側には、
奈落のような静けさが広がっていた。

サッカーは、ときどき残酷だ。

試合は90分では終わらない。

終わるまで、
終わらない。

イングランドが最後に世界一になったのは、
1966年。

それから60年。

大会が始まるたび、
サポーターは同じ歌を歌い続けてきた。

Football’s Coming Home.

サッカーが故郷へ帰ってくる。

いつしかその歌は、

世界一のトロフィーが、
もう一度イングランドへ帰ってくる。

そんな願いを乗せた歌になった。

2026年。

その夢は、

あと数分で届くところまで来ていた。

けれど、

夢は帰ってきたのではなかった。

帰る途中だった。

だから、また遠ざかった。

それでも、

歌は終わらない。

夢も終わらない。

帰ってこないことと、

帰れないことは、

違う。

イングランドへ。

60年待ち続けても、
人は夢を歌い続ける。

だから今日も、

あの歌はきっと、
どこかで誰かが口ずさんでいる。

Football’s Coming Home.

夢はまだ、

帰る途中にある。

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