自然の優しい甘さは時間が作る

自然の恵み。

太陽の光。

乾いた風。

そして、時の流れ。

人間には作れないものだ。

軒先に吊るされた柿は

風に揺れながら

ゆっくりと姿を変えていく。

最初は渋い。

柿が渋いのは

タンニンという成分のため。

でも、

タンニン自体が強い味を持っているわけではない。

口の中で

唾液のタンパク質と結びつき

唾液をサラサラでなくしてしまう。

その

口の中がキュッと締まる感覚。

それを人は

「渋い」と感じる。

ところが柿を干していくと

不思議なことが起こる。

柿の中で生まれる

アルコールやアセトアルデヒドによって

タンニンは形を変える。

水に溶けない状態になり

唾液と反応しなくなる。

すると

あの渋みは消える。

さらに

水分が抜けることで

糖分はぎゅっと濃くなる。

太陽。

風。

時間。

そして

少しだけ人の手。

皮をむいて

吊るす。

ときどき

やさしく揉む。

それだけだ。

実は

人間の手間なんて

たいしたことはない。

甘さを作っているのは

人間ではなく

自然の時間なのだから。

最近の人類は

待てなくなっている気がする。

効率。

効率。

待てないなら

作ってしまえと

人工甘味料を作る。

けれど

太陽の光も

乾いた風も

時の流れも

作ることはできない。

そして

待たなくなったとき

人は

食べ物に対する

ありがたみを失っていく。

有り難く

いただく必要がなくなる。

味噌もそう。

塩もそう。

人間の手間は

ほんの少し。

海水を煮詰める時間。

麹が発酵する時間。

どれも

自然が作っている。

人はただ

その時間を

待っているだけなのかもしれない。

皿の上の干し柿を

ひとくち食べながら

そんなことを思った。

甘さとは

きっと

時間の味なのだ。

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