一滴💧|七十二候|温風至(あつかぜいたる)

温風至。
あつかぜいたる。

温かい風が、
吹きはじめるころ。

けれどそれは、
春のようにやわらかな風ではない。

湿りを含み、
肌にまとわりつき、
身体の奥にまで、
夏の気配を運んでくる風。

梅雨の水気は、
まだ土に残っている。

草は伸び、
葉は厚みを増し、
畑の緑は、
いっそう濃くなっていく。

水があり、
そこに熱が入る。

命が動くには、
潤いだけでは足りない。

けれど、
熱だけが強すぎても、
命は乾いてしまう。

水と熱。
湿りと風。

そのあいだで、
夏の身体がつくられていく。

温風至。

暑さは、
突然やってくるのではない。

風の質が変わり、
土の匂いが変わり、
朝の空気が少し重くなる。

その小さな変化の中で、
季節は静かに、
次の段階へ入っていく。

半夏生では、
水は巡れば命を運ぶと感じた。

そして温風至では、
その水に、
夏の熱が入りはじめる。

潤いは、
熱を受けて草を伸ばす。

身体もまた、
外の空気に応じながら、
この季節を渡ろうとしている。

受け止めすぎず、
拒みすぎず。

冷やしすぎず、
熱を抱え込みすぎず。

ただ、
身体の声を聞きながら、
風の変化に気づいていく。

温かい風は、
夏がこちらへ近づいてきた合図。

水と熱のあいだで、
命はまた、
次の巡りへ進んでいく。

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