温風至。
あつかぜいたる。
温かい風が、
吹きはじめるころ。
けれどそれは、
春のようにやわらかな風ではない。
湿りを含み、
肌にまとわりつき、
身体の奥にまで、
夏の気配を運んでくる風。
梅雨の水気は、
まだ土に残っている。
草は伸び、
葉は厚みを増し、
畑の緑は、
いっそう濃くなっていく。
水があり、
そこに熱が入る。
命が動くには、
潤いだけでは足りない。
けれど、
熱だけが強すぎても、
命は乾いてしまう。
水と熱。
湿りと風。
そのあいだで、
夏の身体がつくられていく。
温風至。
暑さは、
突然やってくるのではない。
風の質が変わり、
土の匂いが変わり、
朝の空気が少し重くなる。
その小さな変化の中で、
季節は静かに、
次の段階へ入っていく。
半夏生では、
水は巡れば命を運ぶと感じた。
そして温風至では、
その水に、
夏の熱が入りはじめる。
潤いは、
熱を受けて草を伸ばす。
身体もまた、
外の空気に応じながら、
この季節を渡ろうとしている。
受け止めすぎず、
拒みすぎず。
冷やしすぎず、
熱を抱え込みすぎず。
ただ、
身体の声を聞きながら、
風の変化に気づいていく。
温かい風は、
夏がこちらへ近づいてきた合図。
水と熱のあいだで、
命はまた、
次の巡りへ進んでいく。

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