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一滴💧|七十二候|麦秋至(むぎのときいたる)
6月なのに、秋と書く。 最初は少し不思議に見える。けれどこの秋は、人間の暦の秋ではない。麦にとっての秋である。 稲がこれから水田に根を張ろうとするころ、麦はひと足先に黄金色の穂を垂れ、収穫の時を迎える。 同じ初夏の風の中に、始まりの命と、実... -
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一滴💧|七十二候|紅花栄(べにばなさかう)
紅花が咲く。 咲き始めは黄色。 やがて橙になり、 紅へと変わる。 けれど、 昔の人が見ていたのは、 花ではなく、 その先にある色だった。 今なら、 赤い色など、 どこにでもある。 無数の赤が並んでいる。 けれど昔は違った。 紅は、 花からいただくもの... -
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一滴💧|七十二候|蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)
蚕が、 桑の葉を食べ始める。 それだけ聞くと、 どこか昔話のようにも聞こえる。 けれど、 この候が作られた頃の日本では、 桑は暮らしそのものだった。 葉は蚕を育て、 蚕は繭をつくり、 繭は糸になり、 糸は着物になった。 一枚の葉が、 遠くの誰かの衣... -
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一滴💧|二十四節気|小満|
小さく満ちると書いて、小満。 人はつい、満ちた瞬間を求めてしまう。 収穫した時。目標を達成した時。欲しかったものを手に入れた時。 けれど自然は、もっと早い段階で満ちている。 朝、布団から出た時の暖かさ。 玄関を開けた時の柔らかな空気。 畑へ向... -
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一滴💧|七十二侯|竹笋生(たけのこしょうず)
筍といえば、 春。 そう思っていた。 けれど、 七十二候の「竹笋生」は、 いまの感覚より、少し遅い。 富山では、 ゴールデンウィークの頃には、もう掘っている。 だから最初は、 「あれ?」と思った。 調べてみると、 昔の候が見ていた竹は、 いま一般的... -
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一滴💧|七十二侯|蚯蚓出(みみずいづる)
雨を吸った土が、 やわらかくなる。 見えない場所で、 動いていたものが、 地上へ、姿を見せはじめる。 静かな畑は、 何も起きていないようで、 土の下では、 もう、季節が動いている。 マオが、 畑にイチゴを食べに来る。 ミミズが出てくると、 「手、出... -
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一滴💧|七十二侯|蛙始鳴(かわずはじめてなく)
田んぼに、 水が入る。 それまで静かだった場所が、 その夜から、急に鳴き始める。 どこにいたんだ。 毎年、そう思う。 けれど、 いなかったわけじゃない。 土の中や、草の陰や、水路の隅で、 ずっと、季節を待っていた。 水が張られ、 空気が湿り、 夜の... -
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一滴💧|二十四節気|立夏|5月5日|端午の節句、そしてタカキの父の祥月命日
5月5日。 世の中では、こどもの日。暦では、端午の節句。二十四節気では、立夏。 春の名残が静かにほどけ、夏の気配が立ち上がる日。 空は明るく、風は少しだけ強くなり、草木はもう、迷わず伸びようとしている。 そんな日に、タカキは毎年、父のことを思... -
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一滴💧|雑節|八十八夜|夏も近づく、身体も近づく
夏も近づく八十八夜。 子どもの頃から、その一節だけは、どこかで聞いたことがあった。 けれど、八十八夜が何なのかを、深く考えたことはなかった。 立春から数えて八十八日。 春が始まってから、八十八の夜を越えた日。 霜の心配が少しずつ遠のき、茶畑で... -
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一滴💧|七十二侯|牡丹華(ぼたんはなさく)
静けさの中で、 ゆっくりと、 ほどけていく。 ひとつの花が、 重みを持って、ひらいた。 ⸻ 春になると、 同じものが、 名前を変える。 ぼた餅。 牡丹の花に見立てて、そう呼ばれる。 秋には、 同じものが、 おはぎになる。 萩の花に見立てて、そう呼ばれる...