雨が去ったあと、
空は、少しだけ軽くなる。
濡れた地面の匂いと、
やわらいだ光が混ざり合い、
景色の輪郭が、
ゆっくりとほどけていく。
そのとき、
気づくか、気づかないかのあいだに、
空に、
色が浮かぶ。
誰かに教えられるものではなく、
見ようとしなければ、
そのまま通り過ぎてしまうような、
ほんの一瞬の出来事。
それでも、
確かにそこにあったと感じるのは、
この季節の重なりの中に、
身を置いているからかもしれない。
芽吹きがあり、
命が動き出し、
花が開き、
空が鳴り、
そして、
そのすべてが一度ほどけたあとに、
光は、
色を帯びる。
七十二候は、
出来事を記録しているのではなく、
そのとき、
人が何を感じていたのかを、
静かに残している。
目に見えるものだけではなく、
見えそうで見えないものに、
心を向けていたということ。
その繊細さが、
この短い言葉の中に宿っている。
豊かさとは、
多くを持つことではなく、
こうした一瞬に、
気づけることなのかもしれない。
空に浮かんだその色は、
すぐに消えていく。
けれど、
見たという感覚だけは、
静かに、
残っていく。

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